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オカルト爆弾

藤原新也「黄泉の犬」読了。
初稿は基本的に10年前に書かれたらしいが、著者の感慨に変化はないのであろう。

日本人は、原子爆弾の洗礼を受けた唯一の民族(注1)で、言うなれば、現代科学の負の側面を、骨身に沁みて知っている。インドやパキスタンの人たちが、自国の核実験成功を子どものように喜んでいるニュースを見るにつけ、世界の中での被爆体験の唯一性と孤独性を痛感するのだ。

オカルト、精神世界、最近の言葉で言うところのスピリチュアルに分類される智慧が、科学と同じように、正しく行使されれば、何らかの実際的な効果をもたらすことを実感している人は、少なくないし、きっと増え続けているに違いない。しかし、正しいオカルト書(変な言い方ですが)、例えば、シュタイナーの「いかにして超感覚世界の認識を獲得するか」などにも記述されているように、霊性開発には危険も伴う。才能がある人ほど、危険も大きいのだろう。

オウム真理教事件は、色々な意味で、戦後最大の犯罪事件というとらえ方が出来るのだろうが、「黄泉の犬」を読みつつ思ったのは、この事件は、日本人にとって、「精神世界」の原爆体験みたいなものだったのかも知れないと云うことだった。アメリカによる原爆投下によって、科学の負の側面を嫌と云うほど味あわされたように、オウム事件によって、「精神世界」の負の側面が、強烈に実体化した、と思う。もちろん、「黄泉の犬」に、こういうことが書かれているわけではありませんが。

つまり、オウム真理教も、その前身の「神仙の会」の頃は、麻原も教祖じみた人格ではなく、グループもまじめな瞑想集団だったらしいことを、考えざるを得ないからである。

「黄泉の犬」の主要部分は、「若きインディー・ジョーンズの冒険」(注2)みたいなもので、今まで書かれなかったインドでの若き日の体験がつづられている。掃除人夫として初期のインド瞑想ビジネスを目撃した話等、すごく面白い。私は、「ゴリラが消える」の章で、泣けました。

(注1)きちんと調べていないのですが、戦前・戦時中に母国から日本まで強制連行され、強制労働を強いられた韓国・朝鮮・中国等の人たち、捕虜等も、被害にあっているのかも知れません。
(注2)この言い方は、藤原新也には嫌がらせに等しい。ごめんなさい。
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  1. 2006/11/03(金) 13:48:48|
  2. 読書|
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