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感情の馴致(酒の上での与太話)

ともかく暑くて、大変だ。地球温暖化の影響なのか。

職業生活の中で、「自己の感情の馴致」と言うことを行ってしまったと思う。

それが、良いことなのかどうか、未だに分からないが、「老化に伴う感情の鈍磨」等の問題以前に、この「感情の馴致」を行ってしまい、自分を隠しつつ、職業的な研究者として生きてきたことは、ある種の悔しさとともに自覚せざるを得ない。自分は異物としての存在感が大きかったのだろうし、世間知らずで生意気な奴だったと言うことも確かで、そのせいで、ある種の田舎くさい地方ボス的な雰囲気の(研究の出来ない)先輩に目をつけられていたようだ。今の若い人は、逆に、「場の空気を読む」などということを小学生の頃からテレビで覚えたりしているのだから、私などには太刀打ちできない。

その分、多少だが、実力よりも(組織の中での)出世が遅れた等と考えている。こういうことは、家庭を持つ生活者にとっては、おざなりにできない問題なのだ。私に反感を隠さない先輩の一人は、退職が近づくと全くやる気を失い、研究から早々とリタイアしていた。研究よりも政治に精を出すタイプは、上に媚びを売り、下に手厳しいので、見分けをつけるのは簡単だ。そう言う輩は、短期的には羽振りがよいが、長い目で見ると、本当に幸せかどうかは、大いに疑問な場合が多い。そう言うタイプには病気になる人もいる。いずれにせよ、この組織の中で正論を吐いてもろくなことは無いと言うことが肌身に沁みたので、ともかく、自分の意見は出来るだけ言わないようにして、自分の研究だけに専念するようになった。しかし、独立行政法人化に際して、労働組合が必要になったときには、その組織化を信頼できる仲間数人と行った。そして組織してすぐ手を引いた。だから、必要なときに言うべきことを言わなかったとは思っていないので、やましい気持ちはない。ただ、「議論の場」があったとしても、若い頃のように無防備かつ正直に「正論」を述べるようなことを、意識して避けるようになってしまった。

もう一つ、これは私の経験から言って非常に確かなことなのだが、出来ない研究者に限って、実力で成功することが無理だと自覚しているからなのか、極く若いうちから組織内政治や自分よりも年少の研究者を使うことに熱心なようだ。腕に覚えのある人間は、逆に、自分の研究にはまってしまうため、組織内の政治的な進展に取り残され、どちらかといえば損をする立場に追い込まれてしまう傾向があると思う。

「馴致」などと言う難しい言葉がどうして出てくるのか分からないが、今書き表したいことを表す言葉は、まさしくこれだった。

【大辞林第三版】
じゅん ち [1]【▼ 馴致】
(名)スル
なれさせること。なじませて,次第にある状態に達するようにすること。
「千年万年の間に―された習慣を/硝子戸の中漱石 」

【新辞林】
じゅんち 【馴致】
なれさせること。なじませて,次第にある状態に達するようにすること。特に,動物や魚にいう。

本論に入ろう。私は十数年前にこの田園地帯に引っ越してきて、その素晴らしい自然環境に喜びを隠せなかった。しかし、数年のうちに、見るたびに喜びを与えてくれた欅の巨木が手足をもぎ取られるような形で切り詰められ、あるいは、切り倒され、輝く緑の丘は建設土の採掘のために切り崩され、美しかった景観は見る見る無残な光景に変化して行った。その様子がよく見える道路を行くのが苦痛になって、通勤路を変えたりもした。一体、あの丘の土を業者に売ると、いくらの金になるのか、少なくとも私が買い支えられるような額では無いのは確かだろう。

こういう経験は、実は子供の頃にもあった。両親が郊外に家を建てて、小学校に上がる直前にそちら(松戸の外れ)に移り住んで大学生になるまでのわずか十数年の間に、家の前の原っぱでつながれた一頭の牛がのんびり草を食んでいたようなのどかな環境が、こじんまりした住宅が密集するベッドタウンに一変してしまった。私は、そのような変化が非常に悲しかったが、「感情の馴致」を行い、そのやり切れない気持ちを封印した。私自身がそのような『自然破壊」を推し進める勢力の一部であることを自覚していたからだろう。

ともかく、人間がその物質的欲望の追求と資本(お金)の論理だけで突き進んだら、自然の与えてくれる限りない喜びは失われる一方で、さらに自然のもつ偉大な回復力(だと思う)によって、人間にとっては好ましくない変化(地球温暖化とか)が起きるのも必然だ。ともかく、人間が(自分が)その生き方を変えてゆく他にないと思う一方で、巨木を切り倒す日本の環境(所有者の判断だけでなく、ひょっとすると行政的な指導があるのではないかと思っている。あるいは近所のクレームもあるかも知れない)は貧乏臭すぎると嘆かざるを得ない。こういう言い方はいやらしいと思う人もいるかも知れないが、昔少しだけ生活したアメリカの田舎町では、樹齢100年越えの巨木が住宅街にも大学構内にもたくさん見られたことを思い出す。

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  1. 2007/08/16(木) 22:21:43|
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